卵が先か鶏が先か?
糖尿病が先か脂肪肝が先か?
どちらが先に生じているかは議論してもしょうがない。
とにもかくにも、2型糖尿病と脂肪肝には深い関連があるわけで、肝臓に脂肪がたまりすぎると糖尿病になりやすいとも言われている。しかし、NatureMedicineの報告によれば、脂肪があるから悪いとは一概にいえないことを示している。
筑波大学のTakashi Matsuzakaらは、肥満により引き起こされるインスリン抵抗性において、パルミチン酸からステアリン酸への変換を触媒する長鎖脂肪酸伸長酵素(Elvovl6)が重大な役割を演じていることを報告している。彼らの報告は、肝臓にたまる脂肪の種類によっては肝臓の脂肪量の絶対値が正常な血糖値の維持に有害というわけではないことを示している。
これまでに知られているインスリン抵抗性を改善する治療のほとんどは、肥満や脂肪肝の改善が先行してインスリン抵抗性の改善がみられていたのだそうだ(つまり、脂肪肝が先にあって糖尿病が起きていたのかもしれない)。
ところが、インスリン抵抗性や高血糖は、肥満や脂肪肝が持続的に存在していても肝臓の脂肪酸組成を変化させれば改善できる可能性があるというのである。
高脂肪食で飼育したり、レプチンを欠損した肥満マウスと交配して肥満+脂肪肝を誘導しても、Elvovl6を欠損したマウスでは、高インスリン血症、高血糖、高レプチン血症を発症しなかった。また、このときのインスリン抵抗性改善には、肝臓でのインスリンシグナル分子IRS-2の回復と肝臓プロテインキナーゼCε活性の抑制が関与していた。
実験結果を総合すると、肝臓での脂肪酸組成は、インスリン感受性を決定する新たな因子だと考えられる。そうだとすれば、脂肪酸の伸長酵素であるElvovl6を阻害すれば、肥満のままインスリン抵抗性を改善し、ひいては糖尿病や心血管疾患合併のリスクを減らす治療法を開発できるかもしれない。
果たして、ヒトでもマウスと同じことが言えるのだろうか?
▼【Nature Medicine 13, 1137 – 1138 (2007)】
It’s what you do with the fat that matters!
http://www.nature.com/nm/journal/v13/n10/full/nm1007-1137.html#a1
▼【Nature Medicine 13, 1193 – 1202 (2007) 】
Crucial role of a long-chain fatty acid elongase, Elovl6, in obesity-induced insulin resistance
http://www.nature.com/nm/journal/v13/n10/full/nm1662.html;jsessionid=9C898B0E37179D52E015A43C438D1562
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見た目に肥満はかっこ悪いわけで、何も望んで肥満を維持したい人などいないかもしれない。しかし、デブキャラで売り出している芸人は、それこそ、命を削って肥満を維持しつつ働いているわけである。
そんなデブキャラ芸人にとって、肥満を維持したまま健康になれるとしたらまさに夢の薬となるのかもしれない。
なお、断っておくが肥満でなかったとしても作用点の異なる薬剤によりインスリン抵抗性が改善されるとすれば、そのことだけでも夢につながることである(念のため)。