[NEJM] ホルモン補充療法が減って乳がんも減る

米国の乳がん発症率が急激に低下している。
米国国立癌研究所のRavdin PMらがNew Engl J Medの4月19日号に報告したSpecial Reportによると、年齢補正後の2003年の乳がん発症率は前年に比較して6.7%低下していたそうだ。

ホルモン補充療法は更年期障害の治療として使われ、顔のほてりや不眠など更年期障害特有の症状が緩和するだけでなく、閉経後女性に認められる骨粗しょう症の予防にも効果的であることが報告されていた。

ところが、安易にホルモン補充療法を行うと副作用として子宮がんや乳がんのリスクが高まる可能性が指摘され、閉経後女性を対象とした大規模臨床試験が2002年に中止された経緯がある。

2003年の乳がん発症率低下は、まさにこのホルモン補充療法を行う患者が大幅に減った時期にあたる。2004年のデータでは、さらに乳がん発症率は低下したものの、その低下率は2003年に比較するとわずかであった。回帰分析の結果から、乳がん発症率減少は2002年中頃から始まり、2003年中頃にプラトーに達していた。2001年から2004年にかけての乳がん発症率の減少は8.6%であった。

乳がんの発症率の減少は、50歳以上の女性でエストロゲン陰性よりも陽性の者にみられ、「女性の健康イニシアティブ(WHI)」試験でエストロゲンヤプロゲステロンによるホルモン補充療法のリスクが報告されたことと関連しそうであった。

【NIH News】
Decrease in Breast Cancer Rates Related to Reduction in Use of Hormone Replacement Therapy
【PubMed】N Engl J Med. 2007 Apr 19;356(16):1670-4. 
The decrease in breast-cancer incidence in 2003 in the United States.

ホルモン補充療法には確かにメリットもあり、日本更年期医学会ではWHIの試験中止は米国女性を対象とした試験であるためすぐに日本人女性に当てはまるかどうかは疑問(ただし、慎重に判断すべき)であるとかつてコメントしていた。

本試験結果をもってすべての高齢女性にホルモン補充療法を中止すべきだというような結論にはならないと思われるが、衝撃的な話ではなかろうか?

1 Comment

  1. 本記事は「黄体ホルモンを併用」しても乳がん等の問題はクリアできないという「衝撃的な話」でございますか?
    素人知識で申し訳ありませんが、「女性ホルモン補充療法は、黄体ホルモンを併用することで、乳がん等の問題はクリアできる」とばかり思っておりました。

    Comment by daisuke — 2007年7月18日(水曜日) @ 01時51分54秒

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