[J Clin Invest] 男性性転換遺伝子?

哺乳類の性別は、遺伝子で決められ、XX染色体は女、XY染色体は男と細胞レベルで決められている。とはいえ、性別の境界線はあいまいなものである。

世の中には、Y染色体がないのに精巣がある性分化疾患(DSD)の患者では、細胞レベルでは女性なのに精巣があるという不思議な状態が生じている。

なぜこんなことが起こるのか。

どうやら、SOX3といわれる遺伝子が異常に強く働いてしまったことが原因のようである。これまでにSOX3遺伝子は、 SRY遺伝子(男性にあるY染色体を作る遺伝子として知られる)に塩基配列が似ていることが指摘されていた。そして、今回、アデレード大(オーストラリア)のEdwina SuttonらがJ Clin Invest誌に報告した成績によって、SOX3遺伝子がSRY遺伝子の先祖かもしれないという考え方が支持された。

研究者らは、SOX3遺伝子の働きを欠損させたマウスを作り、SOX3の欠損が性別決定に影響することはないことを示した。また、この遺伝子をマウスに強発現させると、性腺に遺伝子発現を強く認め、XX男性性転換遺伝子として働いた。

SOX3遺伝子は、SRY同様、男女共通の17番染色体にあるSOX9遺伝子の活性化を介して精巣を形成することが確認された。

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PMID: 21183788 [PubMed – indexed for MEDLINE]PMCID: PMC3007141Free PMC Article
J Clin Invest. 2011 Jan 4;121(1):328-41. doi: 10.1172/JCI42580. Epub 2010 Dec 22.
Identification of SOX3 as an XX male sex reversal gene in mice and humans.

Sutton E, Hughes J, White S, Sekido R, Tan J, Arboleda V, Rogers N, Knower K, Rowley L, Eyre H, Rizzoti K, McAninch D, Goncalves J, Slee J, Turbitt E, Bruno D, Bengtsson H, Harley V, Vilain E, Sinclair A, Lovell-Badge R, Thomas P.

School of Molecular and Biomedical Science and Australian Research Council Special Research Centre for the Molecular Genetics of Development, University of Adelaide, Adelaide, South Australia, Australia.