2010年5月2日の朝日新聞書評欄に「マリー・キュリーの挑戦」
なる書籍が紹介されていた。
今でも男性科学者に比べて女性科学者が少ないことが時折話題
にされることがあるけれど、キュリー夫人の生きた時代はいか
ばかりの制約があったことであろうか。
書評には「その人は、女だった。他国の支配を受ける国に生ま
れた。貧しかった。美しかった。」と娘が母について語った言
葉が紹介されていた。マリー夫人の下で学んだ日本人(山田延
男や湯浅年子)についても触れられており、科学とジェンダー
を考えるうえでも、キュリー夫人の生き様を知る上でも興味深
い本に思われた。
先日、奈良先端技術大学院大学が国公立大学中でもっとも運営
費交付金の評価反映で高い点数を得たことが報じられた(91点
満点中70点でトップ)とき、次のような文言を見かけた。
『
「女性科学者に明るい未来をの会」(古在由秀会長)は23日、
自然科学分野で優れた業績を挙げた女性研究者に贈る「猿橋賞」
の本年度の受賞者に、動物の個体発生時に細胞が形態変化する
仕組みを研究した高橋淑子奈良先端科学技術大学院大教授(49)
を選んだと発表した。
』
このように若くして優れた業績を上げる女性研究者が出てくる
ことはすばらしいことだと思う一方、相変わらず、女性研究者
をひとくくりにした賞が存在するあたりに、まだまだ男女平等
の時代になっていないのだなと感じる(もちろん、先達の業
績を称えて作られる賞を否定するつもりはない)。
結婚か仕事かと2者択一を迫られる女性は減ってきたとはいえ、
まだまだ多くいるのが現状だろう。科学の世界は、肉体に男女
差のあるスポーツと違って、本来はコミュニケーションの上手
な女性の方が能力を発揮しやすい場なのではないかとすら思う
ことがある。
一人の力では限界があり、多くの研究者との協同作業が必要な
今の科学には、女性の持つコミュニケーション力は大きな武器
だと思うのだが、僕の同僚女性を見ていると時折、男性に張り
合おうという気持ちが強すぎて損をしている場合も見受けられ
る。
ステレオタイプな男女像に振り回されるのはよくないが、男女
ともに、それぞれの良さを活かす(活かせる)研究環境が整う
ことを望みたい。
高橋淑子氏の受賞研究は以下のとおり
哺乳類など脊椎動物の血管がつくられる仕組みを世界で初めて解明
管構造形成に細胞同士の情報伝達が関与して調節
~再生医療やがん転移の解明に期待~
プレスリリース文書(pdf)はこちら
◆ 奈良県立医大
http://www.naist.jp/index_j.html