[Nat Med] Notch3シグナルは肺動脈高血圧症を促進

Notch受容体シグナルの伝達は、平滑筋細胞の増殖制御や未分化状態の維持に関与すると考えられている。肺動脈性肺高血圧症は、過度の血管抵抗と小肺動脈での平滑筋細胞の増殖を特徴とし、肺血管抵抗の上昇や右室不全を経て死に至ることもある。
 
 今回、P Thistlethwaiteらは、肺高血圧症の患者で肺小動脈平滑筋細胞のNOTCH3遺伝子が過剰発現していることを明らかにし、肺高血圧症の重症度と肺におけるNOTCH蛋白の量は相関することを報告した。

 
 また、NOTCH3遺伝子を持たないマウスでは、酸素が欠乏しても肺高血圧症を発症せず、一方、肺高血圧を起こしたマウスにNotch3活性を妨げる阻害物質(γセクレターゼ阻害剤)を投与すると治療可能であった。Nature Medicineの2009年11月号の表紙には、Notch3を切断する阻害剤を投与したマウスの肺血管造影図が掲載されている。今回の結果は、今後の治療介入のターゲットとしてNOTCH3-HES-5(Hairy and enhancer of Split-5)シグナル伝達経路が、肺動脈性肺高血圧症の発症にきわめて重要であることを示している。

PMID:19855400
Nat Med. 2009 Nov;15(11):1289-97. Epub 2009 Oct 25.
Notch3 signaling promotes the development of pulmonary arterial hypertension.