病気を治すために薬を飲んでいるというのに、薬によって生命が脅かされるとすれば、それはなんとしても避けたいものである。スティーヴンス・ジョンソン症候群(SJS)および中毒性表皮壊死症(TEN)は、生命にかかわる重篤な薬剤性の有害反応(薬疹)だが、どうして生じてしまうのかについてはわからないことも多かった。
今回、Chang Gung 大学(台湾)のChung WHらは、SIS-TEN患者の皮膚病変部から採取した細胞を調べ、免疫細胞から分泌されるグラニュリシンと呼ばれるたんぱく質(15Kdの分泌型蛋白)が皮膚の水泡や表皮剥離を生じさせる致死的反応に重要な役割を担っていることを報告した。
研究者らが採取した病変部の細胞は、細胞障害性Tリンパ球とナチュラルキラー細胞からなり、遺伝子発現を調べた結果、そこにある細胞障害性の分子がグラニュリシンであった。この蛋白は、同じく細胞障害性に働くパーフォリンやグランザイムBあるいは、Fasリガンドよりも2~4桁多く水泡中に存在した。また、グラニュリシンを枯渇させると細胞障害活性は低下し、マウス皮内にグラニュリシンを投与するとSJS-TENに類似の特徴が現れた。
こうした実験結果は、分泌型グラニュリシンがSIS-TEN患者の皮膚脱落(角化細胞の散在壊死)の原因となる重要な分子であることを示しており、細胞が直接接触せずに生じる細胞障害性機構を明らかにするものである。
本研究結果は、骨髄移植患者でみられる移植片対宿主病などの対策への手がかりとなる可能性も秘めている。
▼原典:Nat Med. 2008 Dec;14(12):1343-50. Epub 2008 Nov 23.
Granulysin is a key mediator for disseminated keratinocyte death in Stevens-Johnson syndrome and toxic epidermal necrolysis.
▼Nat Med. 2008 Dec;14(12):1311-3.
Saving the skin from drug-induced detachment
😯
我が家では、妻が薬疹により皮膚がボロボロの状態になってしまっている(もう直りつつあるが・・・)。
本当に薬により生じた反応なのか、もともとある皮膚疾患の悪化による症状なのかの区別がつきにくいというのも理解できるが、医師や薬剤師間での薬疹に対する認識格差は大きく、ひそかに薬疹に苦しむ患者は多いのではないかと想像する。
妻のケースでも、医師が薬疹としての届出はしていないようだが、本当にそれでよいのだろうか?
薬の副作用について、これまで、何から何まで報告すればいいってものではないだろうに!と苦々しく思っていた。ところが、妻の薬疹をみていると、患者サイドからの主観的判断では、明らかに関連あるケースが放置されている現状もまた、問題なのだろうと感じるのであった。
医師も患者(妻)も、なかなかのんきなもので 脇で見ているこちらのほうがヤキモキしていたりする。