[Am J Respir Crit Care Med] 終末期医療への緩和ケアによるQOL改善評価

 米国において2割以上の患者が死亡の時をICUで迎えている。ICUに滞在する患者への緩和ケアは終末期医療のQOLを考える上で重要な意味を持つ。これまでにも死の床を前にした患者へのコミュニケーションに基づく医療介入が評価されたことはあったがICU滞在期間との関連をみており、患者や家族のQOLには突っ込んだ評価をしていなかった。
 
 ワシントン大学のJ Randall Curtisらは緩和ケアによるQOL改善を目的とした介入の有用性を評価し、緩和ケアに対する家族のアウトカム改善や満足度をさらに高めるためには、より直接、家族にアプローチすることが必要だと報告した。

 
 研究対象となったICUにおいて、介入導入前に253名、導入後に337名の死をみとり、590名はICU滞在中または退室24時間以内に死亡した。患者への治療に対する家族の満足度はFamily Satisfaction(FS-ICU)で、死亡やその過程のQOLをみるQuality of Dying and Death(QODD)は家族および看護師に対して調査した。
 
 この研究での介入は大きく5つの要素に分けられる。緩和医療に対する治療者の教育とトレーニング、問題解決のために行う上司との1対1のセッション、QOL改善に関する情報のフィードバック、病院やICUレベルでのパンフレット資料等によるサポートシステムなどである。
 
 275家族、523看護師から得た集計結果を解析したところ、看護師のQODD評価は介入導入によって著しく改善(63.1→67.1ポイント)し、死亡前のICU滞在日数も有意に短縮(7.2→5.8日)された。緩和ケアに対する家族のQODD評価は改善傾向を示した(62.3→67.1ポイント)ものの有意差はなかった。
 
 本試験において、家族の回答率は55%(496家族中275家族)と必ずしも高くなく、一方で看護師の回答率は89%(590名中523名)であった。このことを踏まえて解釈する必要があると思われるが、著者らは本スタディによって患者のICU滞在期間が短くなることが必ずしも患者家族の心証を悪くしているわけでないことが示された点に価値を見出している。

PMID: 18480429
Am J Respir Crit Care Med. 2008 Aug 1;178(3):269-75.
Integrating palliative and critical care: evaluation of a quality-improvement intervention.

 家族がつらい思いをしているのをみるのは忍びない。
 どれだけ生きたかも大切だが、どれだけ安らかに最後を迎えたかも見守る身には重要なことだと思う。