[PNAS] 値上げの効能_高価なワインはおいしい

値段が高いからといってよいワインとは限らない。しかし、最新の機能MRIを使った研究によると、あらかじめ値段が高いと聞いてからワインを飲むと、脳の中で「おいしい」と判断したときに活性化する部分がより反応するのだそうである。

カリフォルニア工科大学の研究者Plassmann Hさんらは、ボランティア20名に5杯のワインを飲み比べてもらい、おいしいと思った順に並べてもらう実験を行った。彼らの試験目的は、マーケッティングにおいて市場価格の変化が脳での快感など神経機能にどのような影響を及ぼすかを調べることであった。

wine

彼らが行った実験は次のようなものである。

実際に使ったワインは3種類。90ドルで売られているワインに売値どおりの表示、10ドルという表示、5ドルで売られているワインに45ドルの表示をつけて、それぞれ別の種類のワインとして並べられた。

被験者の脳を機能的MRIという装置で評価したところ、事前に値段を知らされていた場合、実際の値段に関わらず高価とされるワインを飲んだときの方が眼窩前頭皮質の「おいしさ」などの快感に反応する部分の活性化が高かった。

つまり、ワインの味はワインの「味に関係ないところ」で感じているわけであり、ワインの薀蓄が大切なものであることを意味しているのかもしれない(私見)。

研究者は「脳は味覚など実際の感覚だけでなく、期待感など事前の情報も計算に入れた上で複雑な処理を行い、快感を認識しているのだろう」と説明している。そして、今回の結果で、被験者たちが事前の値段情報抜きに選んだおいしいワインは、もっとも安い5ドルのワインであったことを付け加えている。

【ABC News】Raising prices enhances wine sales
【PMID: 18195362】Proc Natl Acad Sci U S A. 2008 Jan 14 [Epub ahead of print]
Marketing actions can modulate neural representations of experienced pleasantness.

値段を知らなければ安いワインがおいしいのに、値段を割り振ることによって高いワインの方がおいしいと思うようになるあたり、興味深いものである。消費者は「高価なものは質も高い」と考える習性があり、製品プロモーションにあたって、安易に値下げすべきでないことを現している結果ともとれるのではなかろうか?