[NEJM] 世界初の顔面部分移植後1年半の成績

2005年11月27日。フランスのある病院でヒトにおける顔面移植が行われた(こちら参照)。その後、18ヵ月までの転機がNew Engl J Med誌の最新号に報告された。

患者はイヌに顔をかまれて外観を損なった38歳の女性。48歳の脳死女性の顔面皮膚を移植し、世界初の顔面移植として騒がれたものである。彼女は手術前に自殺未遂も起こしており、その後もタバコを吸っていること(普通、喫煙は移植片生着に悪影響)や、手術をしてよかったと言うコメントを発表するなど度々マスコミをにぎわせてくれた。

今回の報告は、医師たちが医学的側面から彼女の経過を振り返ってみたものである。拒絶反応については移植後 18日目と 214日目に現れたが回復し、その後14ヵ月目にイヌリンクリアランスの低下のため、免疫抑制剤をタクロリムスからシロリムスへ変更した。また、10ヵ月目より拒絶反応の再発防止のために体外光化学療法を導入したということであった。

軽い接触に対する触覚は移植後半年で正常の状態に回復したが、運動機能の回復はもう少し遅かった。上下の唇を完全に閉じることが出来るようになるまでには、術後10ヵ月が必要であった。そして、術後1年半を経過して現在は機能的にも美容上でも満足できるものであった。

【PMID: 18077810】N Engl J Med. 2007 Dec 13;357(24):2451-60.
Outcomes 18 months after the first human partial face transplantation.

「美容上満足できるものであった」

医者にとっての満足と患者にとっての満足はしばしばすれ違いがあるものである。今回の場合、この言葉が双方にとっての満足であればいいのだが・・・