四肢を失った無残な姿で帰って来た「軍神」
そして、戸惑いながらも自身を奮い立たせて「軍神」を支える妻。
その妻を演じた寺島しのぶがベルリン国際映画祭で主演女優賞を受賞した。
おめでとうである。
この映画、まだ見ていないがストーリーを聞くだけでも、なにかすさまじいものを感じる。映画の中で登場するのかどうかは知らないが、四肢を切断した兵士の幻肢痛(phantom limb pain:PLP)に対する治療について、今日はとりあげてみよう。
米国海軍メディカルセンターのS.R. Hanling博士は、重度の下肢損傷により切断に至った兵士4名の幻肢痛が、ミラー療法(mirror therapy)によって有意に軽減することAnesthesia & Analgesiaの2月号に報告した。
幻肢痛は切断後に失ったはずの四肢に痛みを感じる状態であり、Hanling博士によれば、脊髄や脳内の疼痛経路は有痛性の損傷を記憶しているのだそうだ。
ミラー療法では、腕や脚の間に鏡を置いて鏡に損傷していない側の腕や脚を写し、実際には存在していない場所に腕や脚があるように見える状況をつくる。患者はこの状態を見ながら存在しないはずの(しかし、存在するように見えている)四肢を動かすようにする。実際には損傷していない側の腕を見て損傷している腕を動かしているつもりになっているため、脳は視覚的に騙されて、腕や脚には問題なく、疼痛が無いことを信じるようになるという算段である。
▼’Mirror Therapy’ Appears to Reduce Post-Amputation Pain
http://www.healthday.com/Article.asp?AID=635272
▼PMID: 19917622 Anesth Analg. 2010 Feb;110(2):611-4.
Preamputation Mirror Therapy May Prevent Development of Phantom Limb Pain: A Case Series
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19917622?dopt=Abstract